2018年12月3日 公開日

minoriのプロデューサー、nbkz氏にインタビュー! 最新作『その日の獣には、』1月25日発売!

最新作『その日の獣には、』の発売を間近に控えたminori。 今回は、プロデューサーのnbkz氏にブランドの歴史とこれからのminoriについてお話を伺った。

一緒のチームで仕事をし続けることで、 その会社やチームの文化というのは受け継がれていくと思うんです。

──その後はコンスタントにソフトを出されていますよね。

nbkz:1年に1本ペースですね。この頃から、人材育成を考えるようになりました。
それまでは少人数のコアスタッフだけを会社において、
他は外部スタッフを使って制作していました。会社経営を考えると、正しいやり方なんです。
ただ、それをやり続けると人が育たないんですよ。
それは技術的な問題ではなく、「美少女ゲーム」という文化の担い手の育成という意味です。
一緒のチームで仕事をし続けることで、
その会社やチームの文化というのは受け継がれていくと思うんです。
そういうノウハウだったり、会社じゃないとわからない部分を受け継いでいくためにも、
社内にスタッフを置いて育成していったほうがいいだろう、と。


──それは作品ラインナップにも現われています。
2011年以降、美少女ゲーム市場は萌えエロ路線に大きく舵を切りました。
しかしminoriさんは変わらず物語とキャラを掘り下げる作品を作られています。

nbkz:minoriがそういう作品が得意としていないですから(笑)。
結局美少女ゲームも趣味の世界なので、全員に100点なんてことはないんですよ。
誰かにとって100点でも、それは0点という人もいる。
それがエンターテインメントの世界なんだから、いろんな作品があっていいじゃないですか。
だから自分たちの得意なもの、好きなものを作って、
その周辺にそれを支持する人が集まっていけばいいんじゃないかと思います。


──確かにそうです。

nbkz:そしてそれは、結局のところユーザーさんを信頼できるかどうかなんです。
「こういうことをしなければユーザーさんは振り向いてくれない」じゃなくて、
「自分たちがいいと思ってやっていることを正しく伝えられれば
受け入れてくれるユーザーさんは必ずいる」んじゃないかと。
もちろん、人数という壁はあるのですが、
自分の好きをユーザーさんはちゃんと判断してると思います。
ですからminoriはminoriで自分たちの好きだったりいいと思ったものをリリースできるのが、
この市場のいいところなんじゃないでしょうか?


──そういう考え方に通底しているのが、minoriさんの名前の由来になった
「We always keep minority spirit」なんですね。

nbkz:そうです。「メジャーな作品も作っているじゃねえか」とも言われますけど、
確かにそう見える作品もありますけど、市場を分析した結果そうなっているわけではなくて、
その瞬間に作りたいものを作っているだけなんです。
たまたま時流に乗ることもあれば、まったく正反対のものになることもある。
例えば、エッチシーンなんかは、それが顕著に出ている気がします。
特に今作「その日の獣には、」でも盛り込みまくりです(笑)。


──お話が出ました『その日の獣には、』ですが、これはどういうコンセプトの作品なのですか?

nbkz:直球ですが、箱庭劇を、今回は劇中劇で描きたいと思ったんです。
そこに登場する女の子は自分であって自分でない。
これまでも女の子の二面性を描いてきたんですが、劇中劇ということで、
ヒロインが意図して演じている二面性という部分を描いています。
話していてちょっとミスリードになっていそうな気がしてきましたが
「何が劇でどこが舞台なのか?」という観点に摩り替えるとわかるかもしれません。
そしてもうひとつは「欲望とは何か?」ということです。
「人は何かを失う代償に力を与えられたときに、それを天秤にかけて、欲望に勝てるのか」
ということ。それを考えていく中で、企画にまとまってきた感じですね。



──今回も難しそうなテーマですね。

nbkz:なかなか物語にまとまらなくて。
だから1月に『トリノライン:ジェネシス』を出したんです。
前作『トリノライン』から間が空いてしまうから、そのストレッチにファンディスクを出そう、と。
少し小さなプロジェクトになるので、若手社員をメインに立てて経験を積んでもらう意味もります。
まあ、ファンディスクを出すときは、だいたいそういう理由ですよ(笑)。
nbkz:もうひとつ、人材育成もあって時間を空けたというのもあります。
というのも、企業の代謝と考えた場合、当然スタッフの独立は視野に入れていかねばならない。
でも、それは推奨されることなんじゃないかと。
この会社に所属して蓄積したことを他に出て使って、更にそこで他の文化と融合して人が育つ。minoriの考え方も1つ。他の考え方も1つ。これらが合わさっていくことで、美少女ゲーム業界、
もしくはそれ以外の業界にとっても有意義であって欲しいと思っています。
できるようになったら、今度は自身が育てる側にまわって欲しいですし、
それはminoriの内部だけで行うことではなく、
もっと広がりがあっていいんじゃないかって思っています。


──1990年代後半の大手美少女ゲームメーカーがそういう感じでしたね。
どんどん人材を輩出していました。

nbkz:大事なのは、輩出した人ともいい関係を続けることなので、
けんか別れしちゃダメなんですけどね(笑)。
もちろんminoriとしては一時的に戦力ダウンになりますけど、
そこは育成していけばいいだけですから。

僕は美少女ゲーム業界というものがもっとボーダレスになっていくと考えています。

──お話をうかがっていくと、本当に美少女ゲーム業界についてもいろいろ考えられている
nbkzさんですが、そもそも美少女ゲーム業界の現状を、どのように考えられていますか?

nbkz:美少女ゲーム業界に限らず、いわゆるオタク業界というのは、
ユーザーさんと近しい業界なんです。
つまりユーザーさんの顔が見えないと商売ができない──なんでもかんでもオンラインに
行ってしまうのはよくないと思っていのはそういう理由からなんですが。


──電気外祭り(http://www.denkigai.net/dg/
を立ち上げられたりもしていますが、
それも「ユーザーの顔が見えないと商売ができない」からなんですか?

nbkz:そうです。同人即売会的な流れですよね。
そういう「ユーザーの顔が見える」場というのは絶対に必要で、
でも近年それがなくなってきていた。ならば誰かが作らなければいけないじゃないですか。
本来はソフ倫にやってほしいですけどね(笑)。


──確かに(笑)。でも、必要だからとわかっていても、
ご自身で立ち上げるというのは大変だと思います。

nbkz:こういうことは、立ち上げメンバーが少ないほうがいいんです。
人が多くなると予算規模が膨らんで、その結果、何かを決めるのに時間がかかるようになる。
さらに言えば、決め事も多くなってしまうんです。
それは組織内の決め事だけじゃなくて、
イベントそのもののの決め事も増えてしまうということなんですね。
でも、それもお客さんを信じていないからですよ。
最低限のルールさえ決めておけが、あとはお客さんがちゃんとしてくれる。
実際に実際に電気外祭りはうまくまわっていますし、
信じて任せてしまえばきちんと返ってくる性善説的状況はあると思います。
ルールは作れば作るほど、それを守るのにコストがかかってくるし、
参加する人の足も遠ざけるんです。


──言われてみれば、そうですね。

nbkz:間違いないのは、関わる人が増えればお金も増える、ということ。
そして独占が進めば、関わる人間は減るんです。
ゲームの取扱店舗が減るということは関わる人が減るということで、
だから僕は地方の店舗に頑張ってほしいし、積極的に地方店に足を運んだりするんです。
さっきの話ではないですが、会社に人を増やすのも同じで、
「美少女ゲームという文化の担い手」を育て増やすことで、
今は会社のお金を使うことになるけど、10年20年のスパンで見れば、
業界全体に入ってくるお金も増えて、そのおこぼれを享受できると考えているんです。


──そんな中で、今後の美少女ゲーム業界を、どのようにご覧になられていますか?

nbkz:僕は美少女ゲーム業界というものがもっとボーダレスになっていくと考えています。
PCソフトとして出すところもあればandroidやオンラインゲームとして出すところもあり、
2Dや3Dはもちろん、VRを出すところもあり、パッケージ販売もあればDL販売もあり。
いわゆる美少女ゲーム業界と言われるもののボーダーがあいまいになってきている。
それは美少女ゲームの衰退とかとは別の話で──2010年から2015年くらいまでは
確かに衰退期だったと思うんですが、この3年くらいはそういうのとは別に、
ボーダレス化によって、また違う局面を迎えているような気がしています。
これは、発売するハード的な側面だけではなく、
制作側、詰まりソフト側でも起きていることなんじゃないかと。

──確かに近年は、美少女ゲームの作り方も売り方も一気に多様化したように思えます。

nbkz:だから2018年の現在、旧来の「美少女ゲーム業界」というのは
だいぶ曖昧になってしまって、ひょっとしたらもう消えてしまったのかも? とさえ、思います。
ハード的にもソフト的にもボーダレス化が進み、様々な形で美少女コンテンツは発信される中で
「美少女ゲーム業界は衰退した」と見る人もいるし「美少女ゲームの新たな展開が始まった」と
見る人もいるわけです。僕はどちらも間違っていないと思っています。
だから「美少女ゲーム業界をどうしよう」とかじゃなくて、0から1を生み出す、
一次的コンテンツメーカーとしてみんな頑張れたら未来はあると思っています。
例えばbambooさんがクラウドファンディングをやっているのも、そのひとつの形でしょう。
オーガストさんとDMM GAMESさんが組んでソーシャルをやっているのもそうだし、
フロントウイングさんがアニメ方面に進んでいるのも、ボーダレス化のひとつに見えます。
minoriは国内だけでなく海外市場での展開も同時に意識していますし、
各メーカーが「美少女ゲームメーカー」ではなく「コンテンツホルダー」という形に
変わりつつあるんだと思います。


──最後にnbkzさんが今後、どのように美少女ゲームと関わられていくかを教えてください。

nbkz:近年は個人で様々なものを発信する人は増えていますが、
チームとしてモノづくりをする人は減っている気がしています。
僕としては、チームでモノを作るノウハウや楽しさを伝えていけたらなぁと考えています。
minoriをランディングさせたいなぁと思って、当然最後はそこになるんでしょうけど、
もう少し時間はかかりそうです。もっともお金が尽きて強制退場になるかもしれませんが。
いや、いつだってそれは隣り合わせです(笑)。
そんな中、『その日の獣には、』では、社内の若いスタッフがストーリーワークに参加して、
新たなチャレンジをしたりしています。
僕もだいぶ年をとってしまい老いてきているわけですが、美少女ゲーム業界で得たものを
少しでも還元して社会貢献できれば、ここまでやってきた意味があるんじゃないかと思います。
取材・文=cicoly

取材後記

若いスタッフを育て、ブランドだけでなく業界全体を盛り上げていきたいと語るnbkz氏。
『その日の獣には、』も若手のスタッフを起用した作品になっているという。
ブランドのファンが求めるminoriイズムは、新しいスタッフにも確実に継承されているようだ。
そんな最新作の発売日は2018年1月25日となっている。要注目だ。

関連商品

34 件

関連する記事 こんな記事も人気です♪

この記事のライター

かいちょ かいちょ

この記事へのコメント

コメントはまだありません

コメントを書く