2018年12月12日 公開日

『神待ちサナちゃん』や『円交少女』のFrill代表 丘野塔也氏にインタビュー

Frill tone work’s Key 丘野塔也 インタビュー

『Frill』だけでなく『tone work’s』でも代表を務める丘野塔也さんにインタビュー!

短時間だけど、ぎゅっとエロもシナリオも凝縮していて、しっかり遊べる作品を提供するというのをいま一番やっています

────丘野さんは普段どのようなことをされているんですか?

丘野塔也:一応、株式会社ビジュアルアーツの開発部の部長なんですけど、この辺はあまり……。


────語ってないところ?

丘野塔也:そうですね。語っていません。部長という肩書きじゃないんですけど、
部長的な存在です(笑)『ビジュアルアーツ』にはそういう役職はないんですよ。
そもそも役職というものがないので。だから、社外の人に説明するときに困るんですよ。
一応開発部の部長でリーダーみたいなことをやってますということで。


────丘野さんがディレクターを務めている『Frill』というのは、また別の会社?

丘野塔也:自社です。僕が立ち上げたブランドで『ビジュアルアーツ』の中で
エロゲをやっていこう! というブランドです。


────最近の作品は『神待ちサナちゃん』ですよね。
他にもロープライスのゲームが中心になってきている印象です。

丘野塔也:元々『Frill』は2007年の立ち上げからずっと、フルプライスを作ってきたんですけど、
エロゲーでフルプライスはセールス的に厳しいなっていうのを途中で思い始めました。
お客さんの動向として、エロ系のゲームで価格が高いと、待つ傾向にあることが多いんですよね。


────評価などを見てから買うという感じ?

丘野塔也:そうですね。
他にも景気動向や娯楽の多様化といったいろんな要素があると思うんですけど、
とにかく初動であまり動かないんですよね。特に、エロは衝動で買って欲しいので。
そこで待たれるとちょっとキツイ。
『Frill』としては、2013年に『聖娼女』というタイトルをフルプライスで出したんです。
それは評判が良くて、その年のヌキゲーでは一番売れたと思うんですけど、
初動はかなり厳しかったですね。
もちろん評価されれば売れるっていうのはわかるんですけども、
この業界的には初動である程度売れてくれないと厳しい。


────確かに『聖娼女』以降はフルプライスは出していませんね。

丘野塔也:その頃には、もう周りを見渡してみても
フルプライスでヌキゲー作ってるメーカーって自分たちとあと何社だ?
という状況になっていたんです。
これは時代的に、フルプライスは厳しいかなと思いました。
昔から応援していただいているファンの方からは、「フルプラ出してくれ」という声が多いです。
やはり、がっつりと遊びたい方も大勢いると思います。
ですが、やっぱり今はエロコンテンツがどんどん低価格になっていますよね。
どんどん手軽に、パッと衝動のままに買えるようになってきました。
ちょっとムラムラしてきたから買っちゃおう、
みたいな世界になってきているというのはすごく感じています。
そこで、『Frill』でも低価格帯のゲームを作ってみようということで
『円交少女』という作品をリリースしました。
短時間だけど、エロもシナリオもぎゅっと凝縮していて、しっかり遊べる作品を
提供するということに取り組んでいます。

痴漢ものとか、地に足が着いてる内容のほうが「面白い!」と評価されるみたいです

────衝動的に買えるという意味で、販売方法も変わってきているのでしょうか?

丘野塔也:これ語っていいのかな…意外なことにダウンロードはちょっと落ちているんです。
これはうちの会社だけなのか、業界全体なのかはまだ充分に分析できていないんですけど、
なぜかパッケージの方が伸びています。
『円交少女』を出したときは、パッケージが3割のダウンロードが6割くらいでした。
これからダウンロードが上がってきて、パッケージが下ってくるのかなって思ってたんです。
ですが、実際はダウンロードが減ってきて、
パッケージが上がっていくという逆転の現象が起きました。
もしかしたら、ダウンロード販売では2000円でも高いのかもしれませんね。


────『FANZA』を始め、ダウンロードサイトには
2000円未満の抜きコンテンツが山ほどありますからね

丘野塔也:700〜900円とかですよね。
そんな中、うちのスタッフに白矢たつきくんという若手のライターがいるんですが、
彼が一本まるまるやりたいという話になったんですね。
充分キャリアも積んできたので任せてみようかなと。
僕はもう、最初の企画会議で意見を出したくらいで、あとはほぼ任せました。
その作品が先日販売されて、幸い評価もすごく良かったんです。
ただ、ちょっとリッチな内容になりすぎて、お手軽感からはすこし離れてしまいましたね。(笑)
このままいくとフルプライス作品に近づいてくるので、
一度もう少し値段を下げないとダメなのか…
ただ、そうなってくると少人数で作ることになるので、チーム的な強みは生かし辛い。
何か別の切り口がないかな、とも考えています。


────最近のタイトルは『援交』や『神待ち』など、現実的な作品が多いようですが。

丘野塔也:フルプライスで作った時は色々やったんですけど、
結局ウケたのがそのジャンルでした。
どうも、僕はあんまりファンタジーを作る才能がないみたいで(笑)
痴漢ものとか、地に足が着いてる内容のほうが「面白い!」と評価されるみたいです。


────それはお客さんの好みでしょうか? それとも丘野さんの好みでしょうか?

丘野塔也:そもそも僕はファンタジーが好きなんです。
創作の始まりがTRPGなので本当に大好きなんですけど、あまりウケがよくないみたいです(笑)
自分では書ける! と思っていたんですけど、お客さん的にはそうでもないみたいで。
現実的な路線の方が売れ行きも反応も良いので、やっぱり僕は地に足が付いている方かな、と。


────ファンタジー作品といえば、『姫剣士エステル』などがありますよね?

丘野塔也:これめっちゃ自信あったんですよ!
僕がシナリオをプロットから書いたんですけど、
エロあり冒険もありでめっちゃ面白いじゃんって!
実際にプレイしたお客さんからの評判はよかったんですけど、セールスは中程度でしたね。
でも面白いのでぜひ遊んでみてください。(笑)

新入学生に刺さったんだと思って、意外とそれすごいなと

────パッケージを見ていると、確かに『聖娼女』や『円交少女』は絵の綺麗さと、
これからどう汚れていくのかみたいな期待もあって、買ってみたくなりますね。

丘野塔也:これは全然意識してなかったんですけど、
2016年の5月にヤリサーをテーマにした作品を出したんですね。
(『清楚で真面目な彼女が、最凶ヤリサーに勧誘されたら…?』)
開発当初はヤリサーネタみたいなのが流行っていて、
僕はそういったニュースというか事件簿を見るのが好きなんです。
当時のディレクターにニュースを読んでもらって、社会問題提起じゃないですけど、
世相を切ってくれってお願いして作ってもらいました。
そんな経緯で生まれた作品なのですが、最近ライター志望の大学生と話す機会があって、
彼が「ヤリサー買いました」と教えてくれたんです。
「どうして?」って聞いたら、大学に入った年に作品が出て、
ヤリサーとはなんたるかを知りたかったらしいです(笑)
周りにもそういう友人が多かったらしく…
まさか、大学の新入学生に刺さるとは思いもしませんでした。


────丘野さんの思いや性癖を作品にぶつけたことはありますか?

丘野塔也:やはり『聖娼女』というタイトルが僕の中では大きいですね。
売春ものをメインにしたのは初めてだったんですけど、作っていてすごく楽しかったです。
売春に対する男と女の心理みたいな部分は、書き応えがありました。


────先ほど話題に上がっていた作品ですね。どのような内容なのでしょうか?

丘野塔也:とある学園に通っている少女たちが、娼婦になるという話です。
娼婦は世界最古の職業というだけあって、
そこには人間心理がすごく渦巻いてて、書いてて面白かったですね。
すごくボリュームのある作品でずいぶん書いたんですけど、まだ書きたいなって。
このテーマはもっと突き詰めたいなと思って、それで作ったのが『円交少女』なんですよ。


────続編というわけではないけれど、テーマはまだ続いている?

丘野塔也:そうです。ただ、売春よりはもう少し現代的な援助交際という形にしました。


────タイトルの『援交』が『円交』になっていますが、これは?

丘野塔也:元は『援交』だったんですけど、ソフ倫からダメですって返されてしまったんです。
「未成年に対する性的行為を匂わすから、やめてください」って言われて。
しょうがないから漢字にしたんですよね。当て字にして。
『円』の方にして、これなら金で買っている感じがあるし、
いいだろうと思ってやってみたんですけど、
今度は『FANZA』さんに少女がダメですって言われて。
『円交●女』ってタイトルになっちゃいました。なんだよこれって感じで。(笑)
それはもうしょうがないなと思いながら、『円交少女2』まで作っちゃいましたけど(笑)


────丘野さんはそういうお買い上げ体験はあるんですか?

丘野塔也:え? ゲームですか?


────いいえ。実体験の方です。

丘野塔也:いや、ないですよ。一切ないです。100%想像で書いてます(笑)
ただ、体験記はたくさん読みました。僕はもともとそういうのも好きなんですよ。
女性の心理に興味があったんです。なぜ体を売るのか……とか。


────確かに。そこは体験してもわかるわけじゃないですよね。

丘野塔也:空想の世界ではありますよね。
『円交少女』の1に関しては、お金じゃなくて、なんか満たされたいみたいな。
お金が欲しいっていうのもあるんですけど、
やっぱり思春期なり人格形成なりで何か足りないものがあって、
それを援助交際が埋めてくれるみたいな。
そういうところがすごく自分の中で引っかかりました。
それを埋めたいと思いながら、ちょっとだけ次のステップに行く。
シナリオを書いていくうちにそんな話になっていきました。

最初は『ドカベン』押しで『ドカマン』っていうタイトルでした

────ヤリサーもそうですけど、
一部の人間しか触れてこなかった世界でも実在はしてますもんね。

丘野塔也:世相の話をすると、野球部の問題もそうですね。
女子マネはグラウンドに入ってはいけない、みたいなことが一時期問題になってましたけど、
そこが面白いなと思って『パコマネ』のネタを出しました。


────『パコマネ』はタイトルがいいですね。覚えやすいと思います。

丘野塔也:最初は『ドカベン』押しで『ドカマン』っていうタイトルでした(笑)


────それはちょっと、ドカタのドカになっちゃいそうですね(笑)

丘野塔也:面白いんですけど、品がなさ過ぎるなって思って(笑)
それで『パコマネ』に変わりました。


────最新作の『神待ちサナちゃん』も今風な作品ですよね。

丘野塔也:今までの作品に比べて綺麗めのパッケージにしました。
おっぱいも出してないし、ドロッとしてないので、どちらかというとキャラ萌えする作品です。
お客さんの評判は良かったですね。


────『Windows』向けに販売する形式は、これから先も変わらない?

丘野塔也:今のところ、エロの主戦場は『Windows』ですよね。
『Android』もやったんですけど、多分ヌキたいお客さんは、
大画面の前で腰を据えて手淫したいのかなって感じはあります。
とはいえ、徐々にゲームの形式も変わってくると思います。
スマホで簡単にできるコンテンツになると、いいのかなとも思いますね。


────最近は『Windows』を持ってないお客さんも多そうな印象です。

丘野塔也:『Summer Pockets』の時に、『Windows』パソコン持ってないとか、
家のパソコンが古すぎて動かないと言うお客さんがすごく多くて、
やっぱり時代の転換を感じていますね。


────若いKey作品のファンたちと会う機会があり、その時にお話ししたら、
みなさんとても詳しくて驚きました。『MOON.』や『同棲』まで話題に上がったりして。

丘野塔也:そういった濃いファンの方でも、もしかしたら『Windows』を
持っていないんじゃないかなという状況ですよね。
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この記事のライター

かいちょ かいちょ

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