2018年12月10日 公開日

『こいなか』や『こいちゃ』のeRONDO代表 三ツ矢新氏にインタビュー!

eRONDO 三ツ矢新 インタビュー

「固定観念にとらわれなければ、なんだってできます」────業界の荒波を乗り越えてきた男が語るエロゲ論とは?    

────ゲーム会社に入ったきっかけを教えていただけますか?

三ツ矢新:ゲーム雑誌の『PCエンジェル』で
「田所広成の弟子募集」【※】という企画があって、そこに応募したのがきっかけです。
そこから21年間、エロゲ業界の海を漂っています。
僕の経歴を最初から話していくと長くなってしまいますので、
田所さんの自伝に掲載されている『エロゲ海の奇人列伝、三ツ矢新』の章を
読んでいただくと分かりやすいかもしれません。


※『田所広成』
ゲームブランドの『F&C』(旧:カクテルソフト)でシナリオライターとして活躍。
その後、『ストーンヘッズ』や『アナログファクトリー』では代表も務めていた。
●『田所広成の反省記 業界の浮雲児が見た90年代エロゲの時代』

上下巻でBOOTHより発売中。
「俺が出会ったエロゲ海の奇人列伝8 三ツ矢新」は下巻に収録。
https://rerere-rec.booth.pm/items/949224
────高校を卒業してすぐにこの業界へ飛び込んだと伺っていますが、
最初はどの職種で始めたのでしょうか?

三ツ矢新:最初は全く技術がなかったので、何者でもありませんでした。
まずは見習いとして、シナリオとCGとプログラムとデバッグを同時に教えていただきました。
田所さんの意図としては、僕をディレクターにしたかったらしいです。


────三ツ矢さんは、現在おいくつですか?

三ツ矢新:40歳です。業界歴は21年になります。
エロゲ業界はこの年代の方が多いんですよ。
いわゆるエロゲ第二世代と言いますか、
蛭田さん(蛭田昌人氏)、田所さんのひとつ下くらいの世代ですね。
その中では独立が遅かった方です。

自分でブランドを立ち上げるまでは、田所さんやゲーム会社の
『ストーンヘッズ』に15年ほど関わっていました。
田所さんは雇われ社長で『ストーンヘッズ』には別にオーナーさんが
いたんですけど、彼から「製作中のゲームを完成させて欲しい」と頼まれたことが
何度かありました。制作がストップしている企画をなんとか完成させて、商品化させる。

要するに、僕はまだ形になっていない企画や注文をなんとかする人なんですよね。
ディレクターとして、足りていない部分を修復しながら完成させていく。
僕はこういったお仕事を21年間やってきたので、できないことはないと思っています。
固定観念にとらわれなければ、なんだってできます。


────今は『eRONDO』というブランドで活動されていますが、
それ以前はフリーだったのでしょうか?

三ツ矢新:最初は『ストーンヘッズ』や『アナログファクトリー』という
田所さんが立ち上げた会社で働いていました。
それからゲーム会社の『Jellyfish』でしばらくお世話になった後、フリーになりました。

その頃、『ストーンヘッズ』のオーナーさんにまた声をかけていただいて、
『Sweet Home ~Hなお姉さんは好きですか?~』というゲームの
文字校正を担当することになりました。
作業が終わると連絡が来て「ディレクターが居ないから代わりに作ってくれない?」って。
そういった経緯で、文字校正だけのはずがディレクターとして
『Sweet Home ~Hなお姉さんは好きですか?~』に関わることになったんです。
なんとかゲームを完成させて、ようやく一段楽ついたなと思っていたら、
次は『仏蘭西少女 ~Une Fille Blanche~』のディレクターを頼まれました。

ただ、このまま制作を続けると開発資金が足りなくなってしまうので、
「まず、別のゲームを作りましょう!」とブランド側に提案したんです。
そのゲームの売り上げもあって、無事に『仏蘭西少女 ~Une Fille Blanche~』を
発売することができました。

でも、僕自身はそこで燃え尽きてしまって。
そんな時に、今度は『三国恋戦記 ~オトメの兵法! ~(※以下、三国恋戦記)』
というゲームのディレクターを頼まれたんです。
そのゲームもなんとか完成させました。
その後、僕はオーナーさんに新しい企画を提案したのですが、残念ながら通りませんでした。
「それなら、もう自分で作るわ!」と思い立ち、
ゲームブランド『bolero』の『らぶらぼ ~調教なんて興味のなかった俺と彼女の放課後SMラボラトリー~』の立ち上げに繋がるんです。

僕の作った企画はことごとく売れているので、オーナーさんは見る目がないなと思いますね。
これは絶対に書いておいてください。「オーナーは見る目がないな」と。
僕は、僕の能力を見誤った人は一生許さないタイプなので。

────エロゲを作り続けている三ツ矢新さんですが、
例えばソシャゲなどの制作に関わったことはありますか?

三ツ矢新:基本は18禁のPCゲームです。
唯一それ以外の分野で関わったのは、『三国恋戦記』。
非18禁の乙女ゲーですね。
このゲームの開発は、慣れない環境だったこともあって苦労しました。


────慣れない環境ですか?

三ツ矢新:スタッフがほぼ女性だったんです。
僕と、僕の相棒みたいななんでもできる技術的屋がいて、
その二人プラス女性陣みたいな感じでしたね。


────乙女ゲームは女性向け作品なので、男性とはまた違った感性がありますよね。

三ツ矢新:だから僕は、歴史に関する調べ物や進行管理はしましたが、
クオリティには口を出しませんでした。
スタッフのクオリティに関する意見は、丸呑みしようと決めていたので。
そのこだわりに男の僕が突っ込んだら、女性の心に響くゲームにならない。
「相談には乗るけど、決められるところは決めて」というスタンスでいましたね。
結果として、コンシューマーへ移植されるほどの評価をいただけたので、
やり方として間違ってはいなかったのかなと思います。


────そのような経緯で『三国恋戦記』を完成させた後に、
『eRONDO誕生秘話』【※】に繋がるのですね。

三ツ矢新:そうですね。詳細はブログを見ていただければと思います。
設立秘話に書いたことは実際ショックでしたし、悲しい話です。
業界には色々な人がいますから、そういった方たちと
どのように付き合っていけばいいか、という面では勉強になりましたけどね。

ブログに書いてあるんですけど「俺の邪魔をしないでくれ!!!」
っていうセリフが大好きなんですよ!
ここまで色々ありましたが、僕が言いたいのは結局そういうことです。


※『eRONDO誕生秘話』のリンクはこちら
https://arata-mitsuya.hatenablog.com/entry/2018/08/01/113138

『eRONDO』の戦略は落差です!

────ブランドを立ち上げてから苦労していることは何かありますか?

三ツ矢新:苦労ではないのですが、最近鬱病になりかけたことがありました。
自律神経系と不眠症の合併症で、もう虚無の世界ですよ。
面白くもないし楽しくもない。
あと一歩で鬱病というギリギリのところで「過労」と診断されて、
しばらく休養することにしました。
本当は会社のことが心配なので、休みたくはなかったんですけど。


────休養期間があったのですね

三ツ矢新:はい。復活してからは怖いもの無しになっちゃいました。


────休養中は何をされていたのですか?

三ツ矢新:基本的には何もしていませんでした。
とはいえ暇なので、映像作品とかを色々見ていたんです。
そうしたらちょっとずつ楽しくなってきて、少しずつ人間としての感性が戻ってきました。
今にして思えば、休めば治るんだから大した問題ではないですよね。
ただ、いまだに睡眠薬は飲んでいます。考えることが多すぎて、なかなか眠れないんですよね。
僕はプロデューサー兼、社長兼、プランナー兼、ディレクター兼、
スクリプター兼、シナリオ監修なので。

スクリプトを自分で作るのは僕のこだわりです。
映画制作で言えば編集パートなので、監督がやるべきだと思います。


────文章と音楽とキャラクターをどう見せるかという、演出の部分ですよね。
指示出しだけじゃなく、全て三ツ矢さんが担当されているのですか?

三ツ矢新:外部にも発注しますが、見本として、体験版の部分は全部僕が作ります。
最終的にあがってきたものを自分でチェックして、細かい部分は調整するという感じですね。

スクリプトを組む中で僕を苦しませるのは、シナリオライターの駒井半次郎という男です。
シナリオを発注すると、倍の長さになって返ってくるんですよ。
しかも面白い! だから文章を削ることができない。
僕は面白いものとか、才能がある人の意見は丸呑みするんです。
性格的に勿体無いと思ってしまって、何も言えなくなってしまうので。
結果として僕の作業時間も増えてしまって、去年ついにパンクしちゃいました。


────でも、結果として良い作品になればという感じですよね?

三ツ矢新:もちろんです。つまらなかったら、容赦なくリテイクするか、人を代えます。
とある作品を制作している時に、クオリティの低い曲をあげられたことがあって、
その時はめちゃくちゃ怒りました。
発注先の方が「もう三ツ矢さんの電話はとりたくない」と言っていたらしいです。
それくらい、クオリティに関しては厳しくチェックしています。


────『eRONDO』のサイトには「5つの約束」という項目がありますよね。
ブランドを立ち上げた時から「こういうコンセプトでいこう!」と考えていたのですか?

三ツ矢新:『eRONDO』の戦略は落差です。
というのも、僕がこの業界に入った理由として、セーラームーンと
セックスしたいというのがあったんです。
セーラームーンはテレビで脱がないじゃないですか。
でも、絶対に脱がないセーラームーンが同人誌で
エロいことしていると、興奮するじゃないですか。
これはもう大発見ですよ。
絶対に脱がないような女の子を作って脱がせるという落差!
これがうちのコンセプトで、お約束です。

いかにも脱ぎそうな女の子がエロいことをすると、インフレが起きて過激になっていく。
そうなると、CGの差分やセリフの量がどんどん増えてしまいます。
だから、落差をつけて攻めた方が絶対良いと思いますよ。


────なるほど。自身の欲求をクリエイティブな方に消化していますね。
ちなみに二次創作はしないのですか?

三ツ矢新:しませんね。
自分が感動した作品に手を加えても、超えることはできないと思っているので。
二次創作している人を非難している訳ではありませんよ。
僕自身も同人誌を買っていますから(笑)
ただ、個人的にはちょっとできないなと思います。
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この記事のライター

かいちょ かいちょ

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